ドラゴンクエスト ユアストーリー 感想
どうもreoです。
昨日公開された映画、「ドラゴンクエスト ユアストーリー」を見てきて、あまりにも思うところがあったので全力でネタバレしながら感想書いていきます。
映画の内容全部書く勢いなのでまだ見てなくて見ようと思っている方はブラウザバック推奨です。
あと、僕はこの映画に対してネガティブな感想をけちょんけちょんに述べるので、この映画が好きな方もブラウザバック推奨です。
それでも読む方はありがとうございます。
どうぞ
この映画はシーンごとの加点式で見ると100点、オチを含めた一本の作品として見るとマイナス5億点の問題作なのでまず良かった点から書いていきます。というかオチさえなければ傑作でした。
ゲーム「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」を原作としたこの映画、話の展開も大体原作に沿って進みます。
しかし普通にプレイすればクリアまで30時間以上はかかる大作RPGを100分の映画に収めるのは至難の技。凄まじい勢いで次から次へ物語が展開し、緩急なんてあったものではありません。
ゲームでは少なくとも5時間くらいはかかる、主人公の父パパスが宿敵ゲマに殺されるまでの幼年時代は冒頭の5分くらいで終わりますし、戦闘もボス格であるブオーンとゲマ以外は大体ダイジェストです。
原作未プレイの人には説明不足で感情移入する間もあったものではないのではないかと感じましたが、既プレイの視点ではあの壮大な物語を寧ろよくまとめたなぁと好印象です。
ベビーパンサー、パパスの死、奴隷生活、ヘンリー王子との絆、ブオーン戦、結婚、出産、8年間の石化、子供との再会、マスタードラゴンとオーブ関連の話、母マーサとの再会、ゲマ戦と原作ドラクエ5内で印象に残っている最低限必要なイベントは大体拾っていたと思います。
本来は結婚後のブオーン戦を結婚の条件として絡ませるのはストーリーを再構成する上で上手いと思いましたし、花嫁候補のビアンカとフローラは2人とも魅力的でどちらを選んでも説得力がありました。
主人公は結局一度はフローラにプロポーズするものの本心を見抜いたフローラに背中を押されてビアンカと結婚します。フローラが自分の意思でビアンカを選ばせるというのはどっち派の人にも考慮した塩梅だったと思います。フローラは可哀想ですけど物語は先に進めなくてはならないので。
原作では不自然な程に寛大すぎるルドマンが婚約を破棄した主人公に怒りつつも受け入れてくれるアフターもフローラを大事にしている父親像と主人公の自由を尊重する優しさのちょうど良い自然な見せ方だったと思います。
ただ、ブチギレているフローラ派の人も見かけたのでこう思うのは僕がビアンカ派だからかもしれません。
ただ、生まれてくる子供が双子じゃなく男の子だけだったのは釈の都合ではありますが2人とも出して欲しかった... 女の子タバサも含めた4人家族のイメージが強すぎて受け入れ難かったです。
綺麗なCGで描かれる動くドラクエの世界や物語には感動しましたし、原作同様のBGMも映画館音響で聴くと否応無しにテンションが上がり、ドラゴンクエストの映像化という点ではすごく評価が高いです。剣の質感やギミック、呪文の解釈は正に完璧、これがドラクエだと堂々と魅せてくれるクオリティの高さでした。
5だけでなく4や6のいわゆる天空シリーズのBGMを使っていて印象的でした。
ただ、序曲4回くらい流してたのは流しすぎ。くどく感じました。
モンスターの表現は素晴らしく、プルプルで透明感のあるスライムやゲレゲレ(キラーパンサー)の毛並み、その他にもオークやギガンテス、ゴーレムなどおなじみのモンスターが鳥山絵とリアルさの奇跡のバランスで活き活きと動いているのは良くやってくれたと賞賛に値します。
特に、主人公の母を誘拐し父を殺した吐き気を催すほどの邪悪、宿敵ゲマは原作でも相当恐ろしく僕の幼少の時のガチトラウマなのですが、その恐怖感がデザインや言動要所に嫌という程滲み出ていてゾクゾクしました。焦点のあってない目、絶やさない不敵な笑み、人の悲しみをあざ笑う残虐性とどこをとっても最高です。演じる吉田鋼太郎さんの幅の広さに驚きました。
ただ、ゲマのケツアゴが凄すぎてもはやアゴに金○ついてるレベルだったのはウケましたね。元々ゲマは間抜けな所があったりするので行き過ぎたケツアゴくらいチャーミングなところがあって良かったと思います。
一方で公開前から賛否あった人間側のデザインや俳優の大量起用ですが、僕は全く違和感なくドラクエの世界に溶け込んでいたと思います。ビアンカはもはや見た目も性格も完全に別人なほど変化していましたが、有村架純の上手すぎる声と相まってめっちゃ可愛かったのでオッケーです。声に違和感のある人はそんなにいませんでした。
山田孝之演じるパパスも良かったです。ドラクエパロの人気ドラマ勇者ヨシヒコシリーズの縁あっての起用だと思いますがしっかりと頼もしく子を思うパパスでしたし、断末魔として有名な「ぬわーーっっ!!」もわざとらしさや違和感のない聞こえるか聞こえないかの良い塩梅で叫んでいて凄く好印象です。
むしろデザインより性格の改変の方が目立った印象ですね。上記のルドマンやビアンカは僕は結果的にこの映画版も好きですが、ヘンリー王子は一人称が謎に「余」だったり10年間も共に奴隷だった主人公に敬語を使わせていたりと、この改変必要??と思うことがありました。
もともとこの作品の監督である山崎貴は、センスのないオリジナリティを無駄に加えて原作を破壊する原作ブレイカーの異名を持つので、今回もやってくれたなという感じですね。何故下手な奴ほど料理にアレンジを加えたがるのか。
この監督の奇行として他には、「スタンドバイミー ドラえもん」でドラえもんがのび太の世話をサボると電流が流れるというゴミクソ設定を付け加え、2人の絶対的な友情をただの義務へと陳腐化させる改悪を行ったりしています。
この監督に期待した僕が馬鹿だった... ここから確信に触れるネタバレをしてボロクソに批判します。
物語のラスト15分でこの映画は180度ひっくり返ります。
宿敵ゲマを息子と力を合わせて倒し、魔界の門を閉じるために勇者の剣を投げ込んだ瞬間、主人公以外の世界がストップします。本来なら真の大魔王ミルドラースが降臨してくるはずですが、現れたのは謎の仮面の男。
仮面の男はその世界を崩壊させ、「この世界は大人気ゲームドラゴンクエスト5をリメイクしたVRゲームで私はそのボスのコードに擬態したウイルスだ。ゲームなんてやめていい加減大人になれ。」と主人公に語ります。
は?
ここで主人公がこのゲームを始めるまでが回想されます。
VRマシーンの中に入る主人公。「いつもビアンカ選んじゃうから今回はフローラ選ぶように自己暗示かけとこw あ、ロボットと戦いたいんでイベント追加でw」などと舐めたことを言い、現実での記憶をなくした状態でゲームの世界へと入っていきます。
幼少期が異常に短かったのもこの時に幼少期スキップモードを選んでいたからだそうです。
真実を知った主人公の前に今まで一緒に旅をしてきたスライムが現れ、「私はアンチウイルスソフトだったのさ!!」と思いっきり山寺宏一以外の何物でもない声で叫びながらロトの剣を扮したワクチンに姿を変えます。なんだこれ。
その剣で「ゲームだって第二の現実だー!大事な思い出だー!」と仮面の男に攻撃する主人公、仮面の男は一撃で倒され、ついでにミルドラースも倒されたことになって世界は元どおり、平和が訪れてエンディングです。
は???
なんですかこの展開は。
ゲマ戦までの展開は熱く王道で最高のドラゴンクエストでした。どうして最後の最後にこうなってしまったのか。普通にミルドラースを倒してハッピーエンドで500%良かった。まだ終わってないのに劇場から出て行く客まで数人現れる始末、内容が酷すぎて途中退席なんて初めて見たぞ。
VRや夢といったネタは「ドラえもん のび太の夢幻三剣士」や「マトリックス」「レディプレイヤー1」のように、それが何かしら現実に作用したり今後を生きる主人公の成長に繋がって初めて意味を持ちます。
この映画におけるVRネタバラシはこれまでの冒険や激闘は全て茶番だと水を差す行為に他なりません。
「ゲームの世界は虚無だけど心に生き続けてるから無駄じゃないぜ!君の人生を生きろ!ユアストーリー☆」と山崎貴は言いたいのでしょうがあまりにも浅すぎる。お前に言われる筋合いはないと言いたい。
そもそもゲームが好きな人は他人から押し付けがましく言われなくともそんなこと最初からわかっているし、ドラクエが好きな人にとっては誰になんと言われようが自分自身が主人公なんですよね。ドラクエの世界をたかがゲームだとは誰1人思っていない。
そんなファンの心を踏みにじるかのようなこの展開にこの監督がゲームを全般的に見下している本心が有り有りと透けて見えます。
最後のシーンでは元どおり平和になった世界でビアンカと息子アルスが話しかけてくるのですが、今まで魂のあるキャラクターだったものが、その真相を知った後では虚無の世界の喋るグラフィックにしか見えなくなって心底気持ちが悪く、嫌悪感さえ抱きました。この映画はなんだったのか。
大体目の前で父親が殺され、10年も奴隷として働かされ、故郷は崩壊、8年石化した上に目の前で母親も死ぬという歴代1不幸なドラクエ5をバーチャル世界で自分自身で体験したいと思うか!?絶対嫌でしょ。数あるドラクエ作品の中から一番主人公と自分を同一視できない作品を選んだのもミス。
賛否両論だと騒がれていますが、正直賛があるのが信じられない。
ユアストーリーってそういう意味だったんだ!所々でゲームだって伏線があった!というのが賛成派の感動ポイントだそうですが、そもそも物語における伏線回収やタイトル回収といった技法は揺るぎないテーマやメッセージを伝える手段でしかなく、テーマやメッセージがクソだった時点でどれだけ鮮やかに伏線を回収しようとなんの意味もありません。その点でこの結末はあまりにも浅い。
この映画のメインターゲットはドラクエ5を昔プレイしたことのある中年だそうですが、この手垢のついたどんでん返しとテーマに喜ぶのは中学生までで合っていない。それでいて子供や未プレイの人には話の展開が不親切。誰に向けた映画なんだよこれは。
そのテーマでやりたければ最後の最後で「実はゲームでしたーw」にするのではなく、最初から「ゲームの世界に入り込んでしまう物語」として作ったほうが何倍も深められます。本当にセンスがない。
ドラクエが映像化してイメージを損なわずに動くワクワクや楽しさを積み上げた上でそれを最後の最後全てぶち壊すサイコな怪作。そこに至るまでが完璧だっただけに本当に惜しい。ゲマが倒される開始から85分くらいで足早に映画館を出れば名作中の名作、最高に楽しめるのでオススメです。
ここまで言っておいて何ですが結末以外の面白さやワクワク感は本当に素晴らしく、見て良かったと思っています。
それでは今日はこの辺で。